閑古鳥旅行社(別館)
迷走続ける旅行人。いろんな場所へテクテクと。いろんなことをつらつらと。旧名、ヘリテイジトラベラーズ。
フルーチェを自作したい

突然だが、私はフルーチェが好きだ。小学生の頃CMで見たフルーチェというハイカラなデザート。私はあの白いプルンとした甘美な姿に憧れていた。大人になったらフルーチェを一人占めして食べてやろうと思っていたものだ。

そして私は大人になり、子どもの頃の願いを叶えられる立場となった。私のフルーチェへの情熱は現在も冷めてはおらず、毎週土曜の午後3時には欠かさずフルーチェを食して悦に浸っている。

フルーチェを作りたい-01
フルーチェ、おいしいよね

先週、フルーチェを食べながらその外箱を眺めていると、裏面にフルーチェが固まる原理が説明されているのを発見した。それは次の通りである。

フルーチェが固まるのは、
りんごやみかんなどの果物に含まれるペクチンと
牛乳のカルシウムとの働きによるものです

なるほど、つまりフルーチェには果物から取ったペクチンが入っており、牛乳と混ぜることでペクチンがカルシウムと反応してどろどろに固まるということか。……ということは、天然の生の果物からも、フルーチェを作ることができるのではないだろうか。もしそれが可能だとしたら、市販されていない様々な味のフルーチェも自由自在に作ることができるかもしれない。フルーチェファンにとって、それはまさに究極の夢であろう。

ということで、生の果物からフルーチェを作ることはできるのか、試してみた。



まず、ペクチンについて調べてみた。どうやら、ペクチンは柑橘類やりんごから取ることができるようだ。よし、それじゃぁまずレモンを絞って汁を牛乳と混ぜてみよう。なぜレモンを選んだかというと、冷蔵庫の中に唯一あった柑橘類だからだ。それに、レモンの酸は牛乳を固める効果があるような気がする。なんとなく。

フルーチェを作りたい-02
無調整牛乳にレモン汁投入
レモン一個分のビタミンC

フルーチェを作りたい-03
う〜ん、ダメか……

まぁ、おおよそ予想はついていたが、やはりレモン汁を入れたぐらいで牛乳がフルーチェのように固まることはなかった。しかし、全く変化が無かったわけではない。レモン汁を入れて混ぜると、牛乳の中に小さな粒ができたのだ。それを飲んでみると、レモンの酸味とともにざらざらとした舌触りを感じることができた。強いて言えば、飲むヨーグルトの出来損ないみたいな感じだ。

しかし、当然こんなものはフルーチェとは言えない。レモン汁ではペクチンの量がたりないのだろうか。そこでさらにペクチンについて調べてみると、りんごからペクチンを抽出する方法を発見した。これを参考にりんごからペクチンを取り出してみよう。そして牛乳と混ぜて固めてやろう。



りんごからペクチンを取り出すには、当然ながらりんごと、それとあとクエン酸が必要だ。近所の八百屋でりんご、薬屋で食用クエン酸を買ってきた。さぁ、調理開始である。まずはりんごを薄く切り、水とクエン酸を加えてコトコト煮込む。我が家には計りの類は一切無いため、材料の分量はかなり適当だ。

フルーチェを作りたい-04
りんご2個をスライス
ペクチンを取るためなので皮も種もそのまま使う

フルーチェを作りたい-05
水とクエン酸をさらさらと加えて

フルーチェを作りたい-06
弱火でじっくり煮込む

クエン酸を加えたのは、ペクチンを水に溶け出させるためだ。ペクチンは酸性の水に溶けるという性質があるらしい。また、ペクチンが固まる条件としても酸性であることが条件らしい。クエン酸はまさに一石二鳥の魔法の粉なのだ。あ、いや、魔法の粉っていうとなんかアレですな。ふふふ……



りんごを煮詰めて45分。りんごはすっかりどろどろになった。これだけ煮れば、頑固なペクチンも根こそぎ水へ溶け出したことだろう。よし、これを布で濾してペクチン汁(略してペク汁)を取り出そう!

フルーチェを作りたい-07
もはやりんごの原型は無い

フルーチェを作りたい-08
ガーゼタオル(100円ショップで買った)で濾す

フルーチェを作りたい-09
ペク汁が取れた!

ペク汁は思った以上に綺麗な色をしている。普通のりんごジュースより赤いのは皮や種から色素が出たためだろう。色素とともに、ペクチンも大量に溶け出してくれていることを祈る。



そして、ついに牛乳を投入だ。生のりんごから取った天然ペクチン、きっと牛乳は固まってくれるはずだ。期待は高まる。

フルーチェを作りたい-10
ペク汁に牛乳を注ぐ。見た目はいい感じだが……

フルーチェを作りたい-11
……アレ?ぜんぜん固まらない

それは思わぬ結果だった。ペク汁に入れた牛乳はほとんど固まらず、若干とろみが付いた程度。そのとろみがついたのも、ペク汁がどろりとしていたからのような気がする。ペクチンとカルシウムが反応しているという感じではない。レモン汁の時のようなざらざらとした舌触りは無いものの、それでもフルーチェには遠く及ばない。



なぜだ?なぜなんだ?!なぜ牛乳は固まらない!……濃度か?ペクチンの濃度が足らんのか?そこで私はさらにペク汁を煮詰め、濃縮してみることにした。ペクチンは熱に強いのでガンガンに熱しても成分が壊れることは無い(らしい)。

フルーチェを作りたい-12
さらにペク汁を煮詰めたペク汁コンク
これならイケるか?

フルーチェを作りたい-13
が……駄目っ……!

先ほどよりもどろりとした感じはあるが、やはりこれも濃縮ペク汁がどろどろしていただけのような気がする。もちろん、フルーチェのように固まってもいない。ぷるんともしない。

う〜ん、正直もうどうすれば良いのか分からなくなった。クエン酸を適当な目分量で入れたのがまずかったのだろうか。それとも水が多すぎたのだろうか。煮詰めすぎたのが悪かったのだろうか。分からない。何が間違っているのだろうか。



とりあえず初心に返って、ペクチンについてさらに詳しく調べてみた。

そして知った衝撃の真実。なんと、ペクチンには二種類のペクチンがあったのだ!一つは高メトキシルペクチン(HMペクチン)、そしてもう一つは低メトキシルペクチン(LMペクチン)。このうち、果物を煮出して抽出するペクチンはすべてHMペクチンなのだという。LMは人工的にペクチンを精製するときにのみ作られるものなのだそうだ。つまり、私がこれまでせこせこ抽出していたペクチンは、HMペクチンである。

そしてさらに、私はその両ペクチンの性質の違いを知り愕然とした。LMペクチンは牛乳のカルシウムに反応しゲル化する性質を持つ。これが私の求めていたペクチンの性質である。だが、なんたることか、HMペクチンはこれとは違う性質を持っていた。HMペクチンは、カルシウムと反応するのではなく、糖と酸に反応してゲル化するのだというではないか。そりゃいくら牛乳と混ぜても固まらないワケだ。自分の作ったペクチンとフルーチェのペクチンは別物だったのだから。

【二種類のペクチン比較表】
HMペクチン天然 糖と酸を加え熱すると固まる
LMペクチン人工 カルシウムを加えると固まる

なんかものすごい根本的な部分を間違えていた気がするワケだが、ここで終わるわけにもいかない。ペクチンが牛乳で固まらないのであれば、糖と酸で固めてしまえば良いのだ。ペクチンが固まった後に牛乳を加えてしまえばいいだろう。……え?やっぱ間違ってる?でもやっちゃえ!

フルーチェを作りたい-14
HMペクチンを固めるべく大量の砂糖をぶちこんで加熱する
最初にクエン酸を混ぜているので酸は入れなくてOKだ

フルーチェを作りたい-15
だが結果は相変わらず…… えーこれでもダメなの?

何か全てが空回りしている気がする。全てがむなしい。私は一体何をやっているのだろうか。せっかくの新鮮なりんごを細切れにして、どろどろに煮込んで、水分を絞って……それで何も得られなかったのだとしたら、りんごに対し申し訳が立たない。



とりあえず、りんごを無駄にだけはしたくない。こんな変わり果てた姿になってしまったりんごではあるが、最後においしく食べてあげるとしよう。

しかし、水分を絞ってしわしわになったりんごの果肉をどうやって食べようか。とりあえずりんごの果肉を全部鍋に戻してみるとしよう。再びペク汁の水分を吸わせれば、ちょっとは食べられるものになるかもしれない。

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もうヤケだ!うりゃー

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え、ちょっとまって、これってサァ……

なんか、こういうのをどこかで見たことあるような気がする。果物を細かく切って、原型がなくなるまでぐつぐつ煮詰つめて、大量の砂糖を加えるって。要するに、それは、つまり……





つまり……






つまり……






フルーチェを作りたい-18

……あ!



フルーチェを作っていたと思ったら、いつの間にかりんごジャムができていた。そんな夜もあるだろう。

というか、そもそも今回りんごから取ったHMペクチンは、ジャムやゼリーを作るためのものだったらしい。結論を言えば、自宅で生の果物からフルーチェを作ることはできない。市販されているペクチン(LMペクチン)の粉末を使う必要があるということだ。

まぁ、何はともあれ、出来上がったジャムは甘酸っぱくてとてもおいしかった。

フルーチェを作りたい-19
クエン酸の影響か、鍋の底ががピカピカになりました

コメント
この記事へのコメント
はじめまして
こんにちは。LMペクチン 抽出 で検索したところこちらにたどりつきました。
激しく笑わせてもらいました。
お鍋きれいになってよかったですね!
2008/03/02(日) 08:40:58 | URL | dujapon #-[ 編集]
こんにちは
ご覧いただきありがとうございました。

果物からペクチンを取ることができると聞いて試してみたのですが、結果は見事にこんなことになってしまいました(笑)。

果物から取るペクチンはジャムとか作るHMペクチンだったってことを知らなかったんですね。

LMペクチンは市販されているようなので、今度はそちらを使っていろんなフルーチェ作りを試してみたいです。やっぱりフルーチェは大好きなので。
2008/03/03(月) 10:25:59 | URL | キムラ #TDsbHPjI[ 編集]
私も同じことをしてしまいました
いよかんジャム完…成???

ジャムは良く作っていたのでペクチン取り出すなら簡単だと思ってました↓

ペクチンが2種類あるなんて聞いてないよー!

でも勉強になりました↑
2008/03/26(水) 11:53:30 | URL | はじめまして。 #-[ 編集]
いよかんで作られたんですか!やはりペクチンと聞いたらジャムの方を連想するのが普通なのでしょうかね。しかし、いよかんのマーマレードとは、それはそれでおいしそうですね(笑)
2008/04/01(火) 12:57:00 | URL | キムラ #-[ 編集]
今日イチゴジャムを作りました。天然のペクチンでこだわりたかったので大変参考になりました。今回はグレープフルーツを使いましたが次回はリンゴで試してみます。
2008/04/20(日) 22:28:37 | URL | 岡澤 和男 #-[ 編集]
グレープフルーツジャムを作られたんですか。グレープフルーツジャム、これまたおいしそうな響きです。っていうか、こんなサイトで参考になりました?(笑)
2008/04/22(火) 00:28:26 | URL | キムラ #-[ 編集]
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